小説


-闇の歌-
* About Story * 闇の歌
平凡な人生をおくって いた伊月(いつき)はある日、行方不明になった同級生を探しに 行方不明者が多発している村に行くことになり…?
* Writer *
マナタプ
» Genre
長編ミステリー小説
» Comment
小説初心者なので不自然な部分もありますが、心を広くして読んでください(泣) 一応ミステリーっぽい小説なので、どんな展開になるのかハラハラしながら見てください。



登場人物

◆神条 伊月 (しんじょう いつき)
スポーツ万能で頭脳明晰な美少年。なのに毎日暇に過ごしている。

◆山田 勝利 (やまだ かつとし)
伊月のクラス担任。おもしろく、生徒から信頼されている人気の生徒。

◆上田 莢 (うえだ さや)
無駄に明るくてクラスの人気者。ある日 急に行方不明になってしまう。


第1話

―みなさんは 神隠し というものはご存知ですか?

辞書で調べると
「子供や娘が突然行方不明になること」
と出ます。

この話は、その神隠しが
巻き起こす奇怪な物語…


「…よし…。準備は整った …。後は…実行するだけ……見ていてください」


〜20××年〜
とある家のとあるテレビ

「次のニュースです。今日 未明県内のとある村で 小学4年生の女の子が行方不明になるという事件が起こりました。学校の下校時に 行方不明になった可能性が高く、警察が通学路を捜査中です。」


そのとある家のとあるテレビでとあるニュースを見ているのは、この物語の主人 公、神条伊月(17) (しんじょういつき)。 ルックスはモデル並みにすばらしい容姿、すれ違った人が必ず振り返るほど目を 疑う美しい顔立ち
…大げさかな。
頭脳・スポーツ共々学校のトップクラスに入り、男女とわず憧れの的なのだ。


「最近怖いニュースばっかねぇ。やな世の中だわ」
とぼやく母親。
「…暇人なんだろ、その犯人達は。やることないから犯罪を犯すんだよ。」
「…相変わらず怖いこと言うわね〜 女の子に嫌われるわよ?」
関係なくないか?
「別に女に嫌われたってなんとも思わないし」
「まぁやな感じ!…あ。ほら 学校行く時間じゃない!急ぎなさい」
「…うぃ」


だるい


なんでこんな疲れてまで、あんなめんどくさい所へ行かなければいけないのだろ うか。行ったってただ将来に関係ない無駄な知識を叩き込まれるだけなのに。し かも義務教育は終わったからな。もう行かなくてもいいんじゃないか。…しかし 、行かないと後がめんどくさいからな。



…はぁ…



学校へついた。

靴を履き替え、自分のクラスへ向かっていた。
すると

「くそっ…どーいう事なんだコレは!!」

ん?今のイラついた怒鳴り声の持ち主は、田村源(たむらげん)通称げんちゃん。三 十路で、未だ独身の短気な教師だ。げんちゃんはいつも怒っているが今は一段と 怒っているようだ。
「おかしいですよね…」
その周りに先生が数人集まって、深刻そうな顔をしている。
(何かあったんだろうか…)
気になる。


「なんであの村に行くと行方不明になるんでしょうか…?」

!!

行方不明?誰かなったのだろうか…。

ぽか

何かで頭を叩かれた。

「覗き見とは関心しないな 。」
そこには、メガネをかけていて背の高い優しそうな顔つきの、クラス担任の山田 勝利先生が立っていた。ちなみに愛称やまちゃん。
「覗きじゃないです。立ち聞 きです。」
「どっちもどっちだ。」
もう1殴り。
「痛てて…。…何かあったんですか?」
恐る恐る聞いてみた。
「ん?…あぁ…。あんましベラベラ言うことでもないんだがな。お前、隣りのクラ スの上田莢(うえださや)知ってるか?」


上田莢?
…あぁ…。あの元気いっぱいでクソ明るい女か。

「その子が行方不明になってな。」

!?

行方不明…

「家の事情でお母さんの実家に1週間前に行ったらしいんだ。そしたら一昨日にお 母さんから、莢が行方不明になりましたって電話がきたんだよ。」

行方不明か…

「それで先生方ピリピリしてるんですか?」
「ん〜…実はな。その上田が行方不明になった村なんだけどな。…神条、今朝の 小学4年生の女の子が行方不明になったってニュース見たか?」
あ?あぁ…あのニュースか「見ましたよ」
「実はその女の子が行方不明になった村と今回、上田が行方不明になった村が一 緒なんだよ。同じ村で2回も行方不明者が出てるんだ。おかしいと思わないか?」

…確かに…
しかも最近だからな。
なんかあるんじゃないか?

「……。」
先生がじっとこっちを見ている。
「…なんすか?」
「お前…確か、頭いいんだよな。先生達からも評判いいんだぞ。」
「…はぁ…。」
「今度…その村に行くことになったんだよ。」
「…誰が?」
「俺が。本当は上田のクラス担任が行くんだけど、今入院しててな。だから俺が 行くことになったんだ」
…あぁ…確か事故ったって言ってたな…

「一緒に来ないか?」
「なんでですか」
間髪入れずに答えた。
「いや…なんか1人で行くのも不安でな…。伊月が付いてきてくれると心強いんだ けどな〜」
「…いつですか?」
「明日」
「……」
だめです。と言おうと思ったら 「夏休みの宿題免除でどうだ?」


ピクっ

「あ〜。でも伊月は真面目だもんな〜。宿題免除でのるわけない…」
「のりましょう」
「…」

だって夏休みの大量の宿題が免除なんだぞ!?いつもは2.3日で終わるんだが
今年は無理そうだからな。…やったぜ…
ニヤリ



ーこうして俺は、なんの関わりのない上田莢の行方不明になった原因を解明するため、
その村に行くことになった。

…何が起こるかもわからずに…

〜つづく〜



第2話



「お前、上田と面識あるか?」
車の中でやまちゃんこと山田先生が質問してきた。「面識…です…か」
助手席の神条伊月が応えた。
「違うクラスだしな。正直何も面識ないか?」
「…廊下ですれ違うことは何度もあったんですが、話したことは一回もないっすねぇ」
「…そうだよなぁ…。悪いな。」
「いえいえ。」


車にゆられてなんと2時間。とある村についた。そこは都会の人が訪れたら必ず目 を丸くするのではないかと思われるほどの"ど"田舎だった。
見渡す限り田んぼ、田んぼ、畑、田んぼ、田んぼ…そして、ところどころに民家 がぼつんぽつんと建っている。
…人…住んでいるのか?と疑うほどだ。
「確か…上田のうちは…。」
やまちゃんが地図とにらめっこしてる間、俺は村を散策することにした。

緑の草木が生い茂り、雀がちゅんちゅん鳴いている。しかし人はいない。

(なんでこんなにも人がいないんだ…?)


ころころ…ポン

足元に何かが当たった。ボールだ。
「おい!!あっちへはやっちゃだめって言ったろ!?」
「だ…だって…」
子供の声が聞こえた。見てみると、男女数人の子供が遊んでいるようだった。初 めて見る人の姿。しかし、なぜかボールがこっちに転がってきても誰も取りに来 ようとはしない。

「……」

俺はそのボールを拾い子供たちの方へ投げた。 「ほらよ」
「……」
子供たちはボールを受け取ったがお礼を言わない。(礼儀がなってないな…)

「ありがとうは?」

しーん…
…つい言ってしまった…
「あり…がとう…」
気まずそうにこっちへボールをやった男の子が応える。
「よし!!ちゃんと言えるじゃんか」
こんなキャラではないのだが。
「……」
ヒソヒソ…
ヒソヒソし始めた。

(変な奴って思われたかな…)
「…あの人…大丈夫じゃない?」
三つ編みの女の子が言った。
「でも…見たことないよ…あんな人…」
「あ…っ俺は違う街から来たんだよ。…そのぉ…友達を探しに…」
「……」


「嘘」
「え!?」
「嘘ついてない?」
「ついてないよ!!」
…上田が友達ということは嘘だが。
すると
「みんなーっ!!今度の訪問者はいい人だぞー!!」

!?

「本当か!?」
「久しぶりね!!」
いきなり人がたくさん家から出てきた。そしてあっという間に、伊月は囲まれて しまった。
「どこから来たの?」
「何しに来たの?」
「なんて名前?」
質問攻めだ。
「なっ…」
これはやばいぞ‥。


すると
「みんなやめなさい!!」


女の子の声で周りが一瞬で静まり返った。見てみると目の前には、行方不明にな って今、学校を賑わしている上田莢の姿があった。
「お前…!!」
「迷惑してるでしょっ。落ち着きなよ」
「……」
「じゃあ、お兄ちゃんのお話聞かせて!!それならいいでしょ?さっちゃん」
「うーん…。…じゃあ…お話し聞かせてもらってもいいですか?」
「え!?…あぁ…、いいです…けど…」
「やったぁ!!」
「お兄ちゃんこっち来て〜」
「え!?ちょっ…」
俺はあっという間に連れてかれてしまった。



子どもたちに引っ張られ連れてこられた所は村の唯一の公会堂だった。俺は真ん 中に座らされた。
「じゃあまず、質問したい人、手上げて」
司会者らしき子どもが現れた。
「ハイハイハイハーイ!!」何人もの子どもの手が上がった。なんなんだこれは。
「じゃあ、鉄平君!!」
「はい!!小坂鉄平(こさかてっぺい)、兄ちゃん名前は?」
…こんな感じで進んでいくのか。
「…神条伊月」
「かっこいー!!」
…何が?
「じゃあ次、早苗ちゃん」
「はいっ加治早苗(かじさなえ)。誕生日、星座、血液型、身長を教えてください!!」
一気にきたな。
「…1月5日、やぎ座。AB型で身長180cm」
「かっこいー!!」
だから何が?
「次、侑君」
そろそろだるいな。
「柊侑(ひいらぎゆう)、なんでこの村に来たんですか?」
「………」
上田莢を探しに来たなんて、この空気で言えるわけないよな…。
「みんなあんまり、質問しちゃだめよ〜」
上田がスイカを持って現れた。
「さっちゃん!!」
「でも、お兄ちゃん何でも答えてくれるんだぜ!!いろんな事教えてもらったもん!」
「さっちゃんも質問したら?」
「うーん、あとでね」


…てか俺はこんな事してる場合じゃねーんだ。早く上田から事情を聞いて…
…あれ?そーいえばなんか忘れてる気が…

「神条ーーー!!」
バァアン!!

男の声と共に、公会堂のドアが思いっ切り開いた。そこには汗だくのやまちゃん の姿があった。…すっかり忘れてた(笑)。
「やまちゃん…」
「神条!!お前どこ行ってたんだ!!地図見ててパッと横見たらお前の姿がなくて、 探し回ったんだぞ!!」
「す…すみません…」
「ったく…上田もどこにいるかわからんし、どーなってるんだ……」
「え!?」
みんながやまちゃんを見た。
「上田ってさっちゃんのこと?」
「さっちゃんならいるよぉ」
「え!?」
「ほらあそこに……あれ?」さっきまでいた上田の姿がなくなっていた。スイカだ けが残っていた。
「本当にいたのか?」
やまちゃんが疑っている。「…探しに行きましょう。」
外を出るとさっきまで 人っ子一人見当たらなかった村とは思えないほど、人がい た。まるで緊張がほぐれたように。
「まるで違う村だな…。」
やまちゃんの言うとおりだ。すると目の前に上田が。
「上田っ!!」
やまちゃんが呼びかけた。そして上田は今まで走っていたのをやめ、立ち止まっ た。

「上田…」

少し静まり返る。

「…なんで…。お前、行方不明になったんじゃねーのかよ…。なんで普通に…」 やまちゃんがとまどいながら言う。そりゃそうだろうな…。しかし上田は返事し ようとしない。
「上田…」
すると上田が振り返った。「なんかの間違いじゃないですか?」 笑いながら言う。
「え…。」
「あたしが行方不明で世間を騒がしてるなんて…。きっと何かの間違いですよ。 じゃああたし、みんなのところにもどりますね」

まるで上田は何もなかったように笑って話した。そしてその場からいなくなった。

「…なんなんだよ…」
やまちゃんが戸惑っている。 しかし俺にはわかった。笑いながら話していた上田 だが、その笑顔の中にどこか悲しみがあった。


…上田に何があったのか。そしてこの村にはどんな秘密があるのか……


〜つづく〜


第3話


「なんなんだろーな」
2話と同様にまたやまちゃんの一言で始まった。


俺とやまちゃんは上田を探しにとある村までやって来たが、その村では普通に上 田が過ごしていたという予想外の結果を迎え、今は明日の出発に控え村の人から 貸してもらった空き家で寝泊まりをしていた。

「都会の方では上田は行方不明に。でもこの村では上田は人気者のお姉さん。た だの田舎と都会の違いか?」
「…確かにこの村にはテレビとかなんにもないし、唯一ある情報源はラジオ。それでも一部の人しか持ってない。この村の人は上田が行方不明ってわからないか もしれないですね」


これを聞いてる人はそんな大ゲサな。と思うかもしれないが本当だ。すごい不便 …。
「もし上田が行方不明って知ってたら、上田のことかばってるとか?」
「……」
「考えすぎか…」
いや。そーいう場合もあるかもしれない。…でもあの優しそうな人たちが嘘つい てると思いたくないな…。
「まぁ学校には上田はあっちで楽しく暮らしてますよって言えばいいさ。明日また2時間車走らせるんだから、早めに寝よーぜほら!寝ろ伊月!」
「…はい」
本当にこのままでいいんだろうか…。そんなことを考えながらも俺は寝てしまっ た。



「…上田莢の存在に気づいてる連中がいるようですがどうしますか?」
「…構わん。気にするな」
「…わかりました」



次の日

パチッ

俺は目を覚ました。まだ薄暗かった。4時ぐらいか?…今日でこの村ともおさらば だ。…せっかく子供たちに名前覚えてもらえたのにな。……覚えてくれてるんだろうか……。


横を見るとやまちゃんがいびきをかいて、寝ている。気持ちよそうだ。まぁこれから2時間走らせるんだからな。今から体力を貯めとかないと。


いつもなら4時ぐらいに起きたら二度寝するんだが、今は寝れない。

…散歩してくるか…


俺はジャージのまんま外に出た。空をみると徐々に明るくなってる気がする。まだ暗いが。

そこらへんをブラブラしていると、目の前に人の姿があった。よーく見てみると上田莢だった。ワンピースにカーディガンを羽織って歩いていた。確かにこの季 節でも夜になると寒いからな。にしてもこんな夜中に何してるんだ?上田も散歩かな…。
しかし様子がおかしい。異様にあたりを見渡している。そして人目から避けるようにそそくさと歩いて行った。


俺は上田をつけることにした。本当はこんなことするキャラではないが、今回は 仕方ないだろう。

俺は上田にバレないようにあとをつけていった。

上田はきょろきょろはしていたが、俺には気付いていないようだ。


そして歩いて15分ぐらいで上田は森に入っていった。夜の森って不気味だな…。 と思っていると上田は暗闇の中へ消えてしまった。俺は周りをキョロキョロしてたため、上田を見失ってしまった。


森に入って彷徨って15分。辺りは暗く不気味でふくろうの鳴き声が聞こえる。… もう上田も見失ったし帰ろっかな…。とUターンをしようとした瞬間

「調子はどうだ?上田」

男の声が聞こえた。上田? 俺が探している上田か?
俺はそいつらに気付かれないように近づいていった。
木に隠れながらそいつらの姿を見た。
そこには黒服姿でサングラスをかけているあたかも怪しい男と俺が探していた上 田の姿があった。何を話しているか気になるので耳を澄ましてみることにした。
「…まぁまぁです…」
男の質問に上田が答えた。
「まぁまぁではないろーが。お前らのこと探しに来てた奴らいただろ?先生と同級生か?あいつら。」
「……そうだと…思います…」
そうだと思いますじゃねーだろ?俺ら何回廊下で会ってると思ってんだ?そんなに 俺、影薄いのかな…


…っにしてもなんか様子が変だな。

「わかってんだろうな。この村の秘密がバレたら」
秘密?この村に秘密があるのか?
「この村のことが他の村の奴らにバレたら、殺すことになるんだからな」
……!!
「…はい…」
何なんだ?殺すことになるって…上田を!?なんか上田は隠してるのか!?この村の秘密…?

…これは調べる必要があるな…

果たして、この村の秘密とは一体!?そしてあの怪しい奴らはなんなのか!?


〜つづく〜

第4話


「この村の秘密ぅ!?」

2.3話と続き、またまたやまちゃんの台詞で始まった。俺より断然目立っている。
「上田が変な奴らと話してるの聞いたんすよ。この村の秘密を他の村の奴らにバ レたら殺すぞって。誰を殺すとかはわからないっすけど」
「…っにしても伊月、よくバレなかったなぁ。バレたらお前が殺されるところだ ったぞ…?」
…確かに。人を殺そうとしてる奴らに、バレたら殺されるとこだった。
「いいかぁ?伊月!今度からそーいうことがあったときは俺に相談しろ!!お前が死 んだりしたら、俺はみんなにあわせる顔がねーんだからよ!!わかったか!?」
「……」

この村に来て初めてやまちゃんが、かっこよく見えた。ごめんねやまちゃん…
「でもどうしようか…。どーやってその秘密を探る?この村の歴史を調べるにも調 べようがなくないか?図書館とかないかな〜?」 「逆に図書館があるほうがビック リしますよ。あるわけないじゃないですか」
「…はい…」 ちょっとヘコんでだ。
「あ!じゃあ長老とかに聞くのは?村長はいるかいないかわかんないけど、お年寄 りならたくさんいるぜ」…そうだな…お年寄りのほうがこの村に長くいるから色 々と知ってるかも知れない。
「でも教えてって言って快く教えてくれる人…なんていますかね?」
「この村の人達は優しい人ばっかりだぞ?教えてくれるだろぉよ」
「…そうっすね…」

本当は今日帰る予定だったが延期になった。 ちょっと残念。


俺とやまちゃんは聞き込みを開始することにした。「まずこの村で一番ご長老の 人を探してみよう」

「この村で一番年寄りの人?知らないねぇ。みんなお年寄りだからさ。それだった らご長老に聞いたら?」
「一番はいなくない?みんな同じぐらいだよね?だったら ご長老に聞いてみたら?」
「うーん…わからないなぁ。そーいうことなら、この村で一番のご長老に聞くと いいよ」
「だからその長老を今探してんだよ!!!!なんなんだこの村の人達は!!ツッコんで ほしいのかよ!!」
やまちゃんが怒った。俺もその意見には賛成。
「伊月どぉするよ。このざまじゃいつまでたっても、長老にはたどり着けないぜ? 」
「………。」
「どぅだ?」
「上田に聞く」
さんざん悩んだ末にこれだ。

「この村一番のご長老?」
仕方なく実行することにした。
「わからないかな?」
「うーん…上咲大五郎さんかな…?」
「うえさき…だいごろうさん?」
「そ。…でも、なんでそんなことを?」
「あ…。いや、この村にお世話になったからさ。ご挨拶に行こうかなと思いまし てね」
我ながらうまい嘘をついたものだ。
「あそこの角を曲がってそのまま真っ直ぐ行くと、大きな家があるの。そこが大 五郎さん家よ」
「ありがとう」
俺らは上田にお礼を言って早速向かった。
「……」

上田は俺らのことを不信に思っているに違いない。

俺らは角を曲がり、大きな家にたどり着いた。確かにこの村の家の中では一番の 大きさだ。

家の前に来た。 インターホンがない。
「やっぱ違うなぁ。俺らの住んでる所とは」
「…俺はどっちかって言ったら、静かなこっちのほうがいいっすね。…不便です けど」
「確かにな。…よし!すみませーん!!」
………。
返答がない。
「すみませーん!!誰か居ませんかー!!」
…ゴトッ。
何か音がした。すると
「…何でしょうか?」
ヌッと白髪頭の女性が現れた。でも白髪頭にしては若い。
……どこかで見たことがある気が…。
「大五郎さんに会わせてもらいたいのですが。…大五郎さんはいらっしゃいます か?」
「……少々お待ちを…」
いるのか。
女性は奥へと歩いていった。
何分かたって、かえってきた。しかし、大五郎さんらしき人はいない。
「あの〜…」
「主(あるじ)は足が不自由なのでこっちへ来てほしいと言ってます」
主!!なぜ主!?


俺たちは女性に着いていき、ある部屋に入った。そこには高そうな骨董品らしき ものがこれでもかとたくさん並べられており、その割には綺麗な部屋がだった。
そして、そこにあるでっかいソファーに老人が座っていた。髭が長く、白髪頭の
老人だ。…80歳くらいかな?
「腰かけてください…」
俺たちはこれまたでっかいソファーに腰かけた。
異様な緊張感だ。
「…そんな緊張なさらずに。…あ、こっちは私の妻でね。今は身のまわりのこと ほとんどしてもらってるんだよ。」
妻なのか。
っにしては大五郎さんに比べたら若いな。
「以前は動いていた足も、 今では全くと言っていいほど動きません。…年をとるということはつらいもので すなぁ…。…あなたたち名前は?」
以外にしゃべりかけてくれてる。
「山田勝利です」
「神条伊月…です」
「私は上咲大五郎と言います。もう90歳になりますわ」
90歳!
「ずいぶんお若いですね」やまちゃんが言った。
「いや…そうでも…ありませんよ…」
照れてる。
「…で?どういったご用件でいらしたんですか?」
「あ!!はい。ちょっと聞きたいことがありましてですね…」
「…なんでしょうか…?」
「…この村のことについてなんですけど…」
……。
一瞬気まずい空気になった。これはなんかあるに違いない。
「村の…ことですか…」
「秘密とか…あるんじゃないですか?」
「………」
しばらく沈黙が続いた。
「あの…」
「聞いたんですよ」
俺は我慢できず言ってしまった。
「上田莢と変な奴らがしゃべってたのを。誰かを殺すとも言ってました。そんな の黙って見てられない」
「……そうか…」
「教えてください」
俺は真剣に言った。大五郎さんの目をみて。
「…大五郎さ」
「殺すというのは」
その目つきは今まで優しそうな大五郎さんからは、想像のできない憎悪に満ちた 目つきだった。
「殺すというのは君たちのことですよ…」
「!!」

バン!!

銃声が鳴り響いた。見てみると、大五郎さんの奥さんが、ライフル銃を持って天 井に向けていた。さっきの銃声は天井に向けて撃ったらしい。
「秘密があるとバレたら、もう殺すしかありませんね」
ガチャ
「!?」
ライフル銃がこっちに向けられた。
バン!!
俺とやまちゃんは渾身の力を込めて、弾をよけ、部屋から出た。奥さんが追いかけてくる。まるで猪を追いかける狩人みたいに。しかし、やはり年のようだ。ど んどん差が離れていく。さすがに離れた所から弾を当てるのは初心者だと難しい ようだ。すると、
「その人達を捕まえてー!!」
周りの人たちに呼びかけ始めた。これはまずい。その声で、強そうな男性たちが 俺とやまちゃんを追いかけ始めた。
「ハァハァッ…これじゃ捕まっちまうぜ!!…ッハァ、二手に別れよう!!」
「はい!」
俺たちは左に俺、右にやまちゃんと別れた。やまちゃんは昔、サッカーをしてい たため足は速いし、持久力もある。もしかしたら俺より速いのでは…?ちょっと悲しい。
まぁ、やまちゃんは心配いらないだろう。問題は俺だ。やまちゃんは足が長いから、パッと見で足が速そうとわかる。しかし、俺は特別足が長いわけではないから、大変だ。
でも俺は、持久力はまぁまぁある。今も走りながらこんなことを考えていれる余 裕があるのだから。
後ろを見ると、挫折している人が何人かいる。しかし体力がある人もいる。…こ のまま走ってても、らちあかねーな。
俺は右に曲がった。後ろもついてくる。俺はその場にあった家の階段を上り、見 つけられないところへ隠れた。上から見下ろせる。 みんな姿の見えない俺を追い かけていった。ホッとひと安心。しかし、ここも人の家。いつまでもいるわけにはいかない。とりあえず隠れながら進むか…。
と思っていると、
「うおぉおおっ!!」
と、聞き慣れた声が聞こえてきた。
やまちゃんだ。ものすごい形相で逃げていた。
「やまちゃん!!」
俺はやまちゃんだけに、聞こえる声で言った。やまちゃんは気づいた。
「バレないように上ってきてください!」
やまちゃんはうなずき、階段を音をたてずに、すばやく上ってきた。これで大丈夫だろう…と安心すると、
「うわっ!!」
やまちゃんは小さきながらも、そう言って俺の方に倒れてきた。俺はよけることもできずに見事にやまちゃんの下敷きになってしまった。そしてやまちゃんの下 敷きになった俺と、やまちゃんは後ろにあったドアに倒れ、ドアが開き、俺らはその扉の向こうへ入ってしまった。そして思いっ切り、後ろ頭から倒れた。
「……っ!!」
言葉にならん。
すると
「伊月…君?」
聞き覚えのある声がした。見てみるとそこには上田莢がいた。


〜つづく〜

第5話



「伊月君に…山田先生!!」
「上田…」
上田はポカーンとしてこっちを見ていた。そりゃそうだろ。いきなりドアが開き 、人が2人倒れてきたのだから。
「ここ…お前んちなのか?」
上田はイスに座って飲み物を飲んでいた。リラックス はしていたのだろう。しかし、辺りを見渡す限り、蜘蛛の巣が至る所についてお り2、3個ある家具の上にはうっすらホコリがのっている。ここは本当に女の子が 住む家なのか?いや男でも、こんなとこに住もうとしない。
「…ううん。住んでないわ。」
「え?じゃあここは…」
「…たまに来るの。ここって誰も来ないから…」
そぅなのか。秘密基地みたいなものなのか。
「…考えごとでもあるのか?」
「あったとしても伊月君には関係ないわ」
ごもっとも。
「伊月君達こそなんでこんなとこに?」
はっ。そうだそうだ。
「実は…」
「うああああああああ!!」
「!?」
やまちゃんがいきなり大声をあげて起き上がった。
「はぁはぁはぁ…っ村の人た ちは!?」
2人で倒れた時にやまちゃんは頭を打って少し、気を失っていたらしい。それで追 いかけられる夢でも見てたのか…?
「どっか行きましたよ」
「はぁ…よかった…」
「あの…」
「はい?」
「どうしたんですか?村の人たちって…」
…これは言った方がいいのか?でも村の人たちが追いかけてくるなんて言ったら… 悲しまないだろうか…。
「実は…」
やまちゃんがもう話し始めていた。やまちゃんは先生なんだからそーいうこと考 えないのかな…。ってもう遅いが。

「…というわけで追いかけられてるんだけど…」
「………」
無言だ。もちろんそうなるだろう。自分が一緒に暮らしている人たちが、俺たち を追いかけまわしていたのだから。
「…やっぱり…」
やっぱり?どーいうことだそれは。もうわかっていたのか? だとしたら…
「上田は知ってるんだな」
「え?」
「この村の秘密」
「……!!」
「え?え?」
やまちゃんがキョドっている。わかれよ、やまちゃん。
「お前と変な奴等がしゃ べってんの聞いたんだって。この村の秘密がどーとかって。知ってんだろ」
「……」
「俺らは巻き込まれたんだ。知る権利はあると思うけど」
「……でも…」
「関係ないなんて言わせない」
やまちゃんが出てきた。
「伊月に聞いたら誰かを殺すとか言ってたらしいじゃんか。そんなん聞き捨てな らねーよ」
やまちゃんがかっこいい。
「「上田!!」」
「……」
「上田…」

「殺されるのは私なの」

!?

「その秘密があなたたちにバレたら殺されるの」
「なんで…」
「だってあなたたちと一番多く交流してるのは私でしょ?もし、あなたたちに秘密 かバレたら真っ先に疑われるのは私じゃない」
確かに…。
「…もう言うしかないか…」
「……」


上田は俺らに秘密を話してくれた。

「この村はね…。行方不明者が集まる村なの」
「え…っ!?」
「今住んでいる環境から逃げたい人、犯罪を犯しその場にいられない人。いろい ろな理由で行方不明者になった者が暮らしているのがこの村なの」
「…じゃあ…」
「この村の住人は全て行方不明者よ」
「…」
「この村の住人はこの村を守るため、その秘密を絶対にほかの村の人にバラさな いの」
「確かに…そのことが警察とかにバレたら大変だもんな」
上田はうなずいた。
「犯罪者もいるから、警察にバレたらもう今までの生活はできないもの」

…信じられない…。この村の住人すべてが行方不明者なんて…。小さい子供もい るのに…。俺は驚いてしまった。しかしこーいう時やまちゃんは冷静だ。さすが 先生。
「上田も…自分からこの村へ?」
「…そんなもんかなぁ…」
上田が悲しげな表情をした。
「あたしね…行方不明になる前にクラスでいじめられてたんだ」
「え?」
やまちゃんが目を丸くした。
「一部の人から明るすぎてうざいって言われてるの。だんだんエスカレートして きてるんだ。それに絶えきれなくなって、お母さんの実家に行ったとき目を盗ん で ネットで噂だったここに来てみたの。そしたらみんな受け入れてくれて…。ここに住むことになったの」
「そうだったのか…」
やまちゃんはかわいそうにと思っているのだろう。しかし、俺は違った。
「ここが行方不明者の集まりだってことを始めから知ってて来たのか」
上田はうなずいた。
「だってここへ来れば、もう学校へも行かなくていいし、親もいない!!そんない いことってないよ!!」

俺は我慢できなかった。
「上田…!!」


その瞬間

バァアアン!!

銃声が聞こえた。
それはあっという間の出来事だった。どこからか放たれた銃弾がやまちゃんの右 腕に当たり、やまちゃんが倒れたのだ。


「先生!!」

やまちゃんの腕からは血が流れだしていた。もう少し左へいっていたら命の危険 もあっただろう。
「ぐぁっ…!!」
やまちゃんが痛そうにしている。
「…っどこから…!!」


すると
「教えてしまったのだね」
いきなりドアが開き、大五郎さんが入ってきた。
「あんたか…!!」
「正確には私でなく私の妻だよ。彼女は気が荒くてね」
「大五郎さん…」
上田が脅えるように言った。
「上田君。とうとうバラしたみたいだね。…悪いが全部聞かせてもらったよ」
「!!」
まずい…。
「残念だったなぁ。君は子どもたちにも人気があって、アイドル的な存在だった のに…。そう秘密をバラされてはねぇ…」
大五郎の顔が変わり、その顔は今まで優しそうな顔だったのが一変し、口は笑っているが、目は憎悪に満ちていた。
「殺すしかないよなぁ!!」
その声を合図に銃がこっちに向けられた。
「逃げるぞ!!」
こっちもこの声を合図に俺らは、上ってきた階段を下り始めた。そして、山の方 へ行き、木や草がたくさんある雑木林に身を潜めた。やまちゃんの腕は上田が持 っていたハンカチで血は止めてある。しかし痛そうだ。ピンク色のハンカチだっ たのに赤く染まっている。
「先生大丈夫ですか…?」
上田が心配そうに聞いている。
「あぁ…。なんとか…」
「すみません…」
上田が謝った。
「…別に上田のせいなんかじゃない…。悪いのは…」
「悪いのはこの村をつくった奴だ」
俺はつい言ってしまった。
「こんな村。ない方が全然いいに決まってる」
「そんな…っ」
「お前言ったよな?ここは学校もないし、親もいない。こんないいことってないって」
「……えぇ…」
「ふざけんじゃねぇ!!」
ビクっ!!これは俺ではない。やまちゃんだ。顔は傷の痛みで苦しそうだ。
「確かにここは幸せだよ!!学校もない親もいない!! 楽園のような所だ!! でもなぁ!みんなが秘密がバレないようにこそこそしてるのが本当に幸せなのか!? 犯罪者をかくまってるんだろ!?かくまってる奴もその犯罪に協力してるってこと で警察に目をつけられるんだぞ!?それが本当に幸せかぁ!?」
「…」
「秘密がバレたら殺されるなんて…。嫌だろ…?」
「…」
「戻ろうぜ…。いじめから逃げずにさぁ、こんなとこに逃げようと思うなよ。逃 げるなよ!!」


やまちゃんがハァハァ言いながら、そう言った。 確かにその通りだ。バレないようにこそこそしてるのが本当の幸せなんかじゃな い。
「上田…」
「……」
すると一滴、上田のほほから水が垂れた。泣いているのだ。
「上田…」
「あたしだって…」
……。
「あたしだって逃げたかったわけじゃないの!でも、大人が君たちはただ、秘密を 守って暮らしてもらえればいいって…。それだけで幸せな日々が待ってるんだと 思うと…。だから住むことにしたんだけど…。…ごめんなさい…!」
上田は泣き始めた。
やまちゃんはもういいみたいだ。
しかし俺は
「上田は悪くない。悪いのはこんな村を作り、子どもたちを巻き込んだ大人だ」
「…うん…」
上田は涙を拭きながら少し笑顔になった。

「しかしどーするよ。このままここにいたって時間の問題だぜ〜?」
…確かに…。周りを見ると俺たちを探している人が何人かいる。見つかるのは時 間の問題だ。それに今は元気に話しているやまちゃんも、腕に怪我をしているか ら、いつダウンするかわからない。どうするべきか…。
「なぁ上田。ここって電話つながらないよな?」
「え?…えぇ…。山奥だから…」
「…もしかしたら電話自体ないとか?」
恐る恐る聞いてみた。
「…一台しかない…」
ホッ。あることはあるのか。しかし一台だけとは。
「どこにある?」
「大五郎さんちよ」
げっ…。よりによって…。
「ねぇ…電話って…」
「…警察に…かけるつもりだった」
「……」
「あの人たちは俺らを殺そうとしてる。それによって他の住民が被害者になった ら嫌だからな。大事になる前に警察に知らせるんだよ」
「………」
「この村が無くなるかもしれないけど、ほぅっておいたら被害者が出るかもしれ ないんだ。つらいかもしれないけどわかってくれ」
俺は上田を説得した。今まで自分が楽しく住んでいた所が無くなるのは誰だって つらい。しかし、それによって被害者が出る方がよっぽどつらい。それを上田に わかってほしかった。
「…………」


少し間が空き、上田は頷いてくれた。しかし、顔がつらそうだ。
「大丈夫。子どもたちもちゃんと保護されるし、大人だってそれなりの対応をしてくれる。警察に任せよう。な?」
「…うん…!!」


つづく