小説
-姫様都市 ~Last Night-
* About Story *
美大生 野呂あゆみ(18)は、大学に程近いアパート"あさくら荘"に田舎から越してきた。
だが越してきたアパートの居住者はみんなホスト・・・!?
朝早く出かけ、夜遅くに帰ってくる彼らの勤め先は、 なんと今話題のホストクラブ"BLUE ROSE"だった。 ホスト達に翻弄され続ける日々を送るあゆみ。
―そして3年前のクリスマス・・・彼らに起こった事件とは・・・―?
* Writer *
和杏
» Genre
長編恋愛小説
» Comment
こんちは(*´∀`)ノ和杏です。
こんなサイトにお越しくださって、ありがとーございます!!o(*^v^*)o ホント・・・小説がちゃんと日本語になってるか怪しいです(*ノノ) なかなか開設に至れず、夏休み突入しちゃいましたけど・・・なんとか開設!! 更新がいつまで続くか心配です(ー_ー;)
どうか気長に付き合ってやってください(;´▽`) それではごゆっくりー
登場人物
◆野呂 あゆみ(のろ あゆみ)
美大生。恋愛経験→園児のときに一緒に遊んだ近所のお兄さん。
◆椎葉 藍里 (しいば あいり)
アパート“夕凪”の大家さん。おっとりしているようだけど、家賃滞納は許さない。
◆国土 彰吾 (こくど しょうご)
クラブ"BLUE ROSE"のNo.1ホスト。無責任。
第1話 出会いは別れのなんとか
―ホストクラブ、
貧乏で恋愛に縁がなく、芸術にばかり没頭してきた私には、 一生関わることの無い世界、そう思っていた。
そう、ここに越してくるまでは―。
...ここは某所の国立美術館。
ヤーコプ・ファン・ロイスダール作、『砂丘と小さな滝のある風景』
その風景画を前に、18歳の美大生 野呂あゆみ は目を輝かせながら立っていた。
「やっぱ17世紀の風景画は最高...!」
そう言って食い入るように絵画を見つめている。
しかもここ1時間ずっとである。
「さすが黄金時代!この風景の素晴らしさが伝わってくる...人物の小ささが自然の迫力を ぐーっと押し出しているのね、『ベルトハイム城』も精密で写実的で...圧倒されたものだけど、この作品もたまんないわ...」
・・・・・。
誰に語りかけているのか、ずっとこの調子だ。
通りかった人に「いい作品だよね」と声をかけられても、全く反応しないほどに 魅入っている。
「こんど本場オランダに行ってみようかな...でもお金が...」
あゆみが腕組み唸っていると、
「ちょっと、それどういうことよッ!!?」
・・・!?
館内に突然大きな怒鳴り声が響き渡った。
女の甲高い声だ。
あゆみはビクッとして振り返る。やっとこちらの世界に舞い戻ってきたようだ。
そこには、一組のカップルがいた。
「ねぇ!!結婚するって、私だけを愛してくれるって言ったじゃん!! だから私...」
涙声の女は、高そうな飾り物をたくさんつけた、ロングヘアの綺麗な若い女性だ。
雰囲気から察するに、修羅場のようである。
「お父さんからいっぱいお金もらって、ぜんぶ彰吾くんにつぎ込んであげたのに! あの女は何なの!?どうしてホテルなんて...」
「・・・・・・・」
相手の男は押し黙っている。
五月蝿いなぁ...。あゆみは心底迷惑そうにムスッと不機嫌面を浮かべた。
これだから、若者は常識離れしてるって言われるのよ、お父さんに。
「いい加減にしてください!」
ついに堪忍袋の緒が切れたあゆみは、無意識のうちに二人を怒鳴りつけていた。
自然と体が動いたのだ。
「ハァ?っつーかあんた誰?...まさか...」
何かを察したように、女は今にも狂乱しそうな顔であゆみを睨みつけ始めた。
あらぬ誤解を招いてしまったようだ。
「アンタも彰吾くんに付き纏う女ね!!横から入ってきて何よ、 二人でこれから会う約束でもしてたっての!?」
「え」と呆然するあゆみをよそに、女は怒りを爆発させた。
「ダメそんなの!!もうお父さんにも言っちゃったんだから!結婚を考えてる人がいるって!! 彰吾くん!こんな貧乏そうなガキなんてどうでもいいじゃん!ねぇってばッ!?」
男の肩を揺さぶりながら言い寄る女。...そこまで執着することないのに、あゆみは 呆れ顔で二人を眺めていた。
すると、今まで口を閉ざしていた男が はーっと溜め息をついた。
溜め息をついてから、こう言った。
「お前より、そこの"かおり"が大事なんだよ」
..."かおり"?それって、まさか私のこと?
あゆみは辺りを見回した。おじいちゃんが一人、居るだけだった。まさかおじいちゃんが "かおり"じゃないだろう。
「そんな...ッ!彰吾くんどうして!?」
女の泣きながらの問いに、男は力説を始めた。初対面のあゆみについてである。
「かおりはな...家が貧乏でさ、かわいそうなんだよ。毎日食事は一回なんだ。 俺ってそういう子、放っとけないタチだから...お前とずっと一緒に居ると、かおり が餓死しちまうだろ?」
...私は難民か。
しかし、この嘘で塗り固められた話を女はすっかり信じ込んでしまったようだった。
キッとあゆみを睨みつけ、ズンズン近づいてくる。
ひぇえッ!
「この性悪女...ッ!!そうやって自分だけ可哀想な女を演じて彰吾くんみたいな 純粋な人たちを騙してきたんでしょ!貧相でスタイルにも容姿にも恵まれなかった からって!最低だわ!」
「ま、待ってください!違います!私全く関係ないです!」
「そうやって自分に都合が悪くなったら逃げるのね!つくづく最低だわ!」
気付くと男は居なくなっていた。
―その後も女の怒りは治まらず、2時間もあゆみは怒鳴られ続けた。
2時後ようやく館内の警備の人によって和解にこじつけ、
ビンタを食らって
あゆみは解放された。
あぁもう!
関わるんじゃなかった!
不機嫌ヅラをより一層濃くしたあゆみは、電柱に身を潜めている怪しい人物に目がいった。 ...さっきの彰吾とかいう男だ。何をしているんだろう。
「ちょっと」
「うわッ!...ってあんたか。アイツかと思った」
ならさっさと帰ればいいのに。
「あんたか、じゃないでしょ。さっきはよくもデタラメを言ってくれやがったわね。 おかげでホラ、殴られたんだから」
頬にできた赤い痕を見せ付けると、男は含み笑いで謝罪を述べた。
「悪かったな、巻き込んじまって」
「...全然悪びれてない...。もういいです、ところで・・・かおりって何ですか」
「お前"かおり"っぽいだろ、顔が」
...なんじゃそりゃ。
一発ブン殴って帰ってやろうかとも思ったが、
「あゆみです、野呂あゆみ」
「あ?」
「私の名前」
「のろ・・・・・あゆみ・・・」
男は何かを考えるように黙り込んだ。その顔をちょっとでもカッコいいと思ってしまった 私は、救いようの無い馬鹿だ。
あゆみが男に背を向け、帰ろうと歩き出したとき 男がふいに、こう呟いた。
「・・・・・・・かめ?」
「・・・」
・・・パシーンッ!
―"夕凪荘"、ここが私の新しい家。
美大に通うために、越すことになったアパート。
―そしてこのアパートでの出会いが、あゆみの人生を大きく変えることになる―。